北アルプストリップDAY2
2014年 07月 29日
風が吹き荒れていた。
はためくシェルターの音、ばたばたばたばた。
おおよそ2時間に一度くらいのペースで覚醒しては温度計を確認したり水を飲んだりして再び眠気が降りてくるのを待つ。
ストックシェルターのL字開口部のジッパーは上下共にある程度開けたまま。
これは以前完全に閉めて寝たところ、いくら通気の効く素材だといってもやはり空気を通さないとダメで、酸欠になったことがあるから(笑)
そのベンチレーションから流れ込む冷たい風がシェルター内の酸素を確保してくれているが、やはりそれなりに冷える。夜間を通してシェルター内の気温は10〜13度。温度計の数値よりも寒さを感じたのは風を中に入れすぎたからだろうか。
4時には完全に覚醒してしまったので、朝日を眺めがてらテン場と小屋の間をジョグで何回か往復して身体を温める。
そうこうしている内に皆次々と起き出して撤収作業。
朝食を済ませたら、今日も一日よろしくお願いします。
あ、そうそう夜中にツェルトが風で崩壊して大変だった人がいたとかいなかったとか(笑)
この日のルートは、槍ヶ岳➖東鎌尾根➖西岳➖大天井岳➖燕岳➖大天井岳。
天候は快晴。ありがたい。
遠ざかって行く槍の姿をかっこいいかっこいい言いながら進む。
東鎌尾根を走り西岳へ。皆調子良さそうだ。
さらに歩を進め大天井ヒュッテ。
そしてさらに大天井岳までかなりしっかりした上りを行く。かなりバテバテで足下フラフラ(笑)
今日は大天井岳のテン場が宿だから、とにかくそこまでがんばって行こうと一歩一歩足を前に出す。
なんとか大天井岳に着いた頃には大天荘のランチオーダーストップまで一時間を切っていたので即座にイン。
んで、ここがなんていうかこんな高い山の中にあるとは思えない程のメニューの充実っぷりと食事のクオリティーで、ホント美味しかった。スポーツ羊羹とカップヌードルをメインに動いているだけにありがたかったな。
シェルター設営して14時くらい。あー今日も良い天気だったなーバテバテだったなー楽しかったなーお休みなさーい。
…ではなく、燕岳往復である。
もう正直身体重いし明日もあるし地図見たらなかなか長いし今日は今日で堪能したような気もしっかりするしでも故障してるわけじゃないし天気も完全に良いし向こうに見える山々は完全に楽しそうだしなんていうか行かない理由はひとつもないよね(笑)
途中でダメだと思ったら引き返しますから、などと弱気発言しながら500mlソフトフラスクを満タンにしてヘッデン装着していざ。
下りは回せるんだけど、なにせ上りで足が止まる止まる。遅ればせながら燕岳に到着して写真撮った後は復路。
ここからはモタモタしてたら日が暮れるし、気温も一気に下がる。遅い誰かを待つことで発生するリスクもあるし、ルートは明瞭でロストすることはない。完全に各自ペースで一路大天井岳へGO。
売り切れの僕は最後尾を行く。
こうなればひと時の一人旅を楽しもうではないか。
当然だが、行きと帰りでは景色が変わる。陽の位置も変わり山と空の色が違う。吹く風も心地よいものから身体を徐々に冷やすようになり、ノリノリで下ってきたガレ場は足下の不安定な上りになる。
身体は重くなる一方、精神は高揚の一途を辿っていた。こういうのこれまでもあったなあ、どこかのレースだったなあ、プライベートでもあったなあ、こんな時、あんなだったなあ。
なんでだっけなあ、今日もこんなにしんどいのに楽しそうに進んでんのは。
ああ、そうだ、仲間が待ってくれてるからか。
なんだそんな甘ちゃんな理由か。独りだったらどうすんだ(笑)
まあでも今回は仲間が待ってくれてるんだ。そう自覚すると、さらにゴールが楽しみになってきた。
あとちょっと、あとちょっと、と声に出しながら最後の激上りに取り付いてまもなく、傾いた陽に促されるように後ろを振り向いた時、そこには紅く灼けた表銀座の姿があった。
写真の何倍も綺麗でかっこよかった。
ヤバイ、これはヤバイ。
YABAI!を、連発しながら何度も後ろを振り返った。
そして何回も何回もスイッチバックを繰り返し最後の直線に入った時、陽をバックにシルエットだけになった仲間4人の手を振る姿と声援が目と耳に飛び込んできた。
もうホント嬉しくて、もうホントしんどいのに笑うしかなかった。
お礼を言った後、なんて言ったらいいかわかんなくなっちゃって 余裕でした などとわけのわからんことを口走りながらへたり込む。
感動的なゴールであった(大袈裟)
ゴールの余韻に浸りながらも大天井岳のテン場は強風。少し低体温の気もあったのですぐにありったけのウェアを着込む。周辺ではペグダウンの甘いテントが浮き上がりぶっ飛びそうになっている。
とにかく腹に何か入れなければと小屋のカップうどんを食べる。着込んだけど寒くてシェルターの中で食べるしかないかと思案していたが、テン場使用なら小屋の中で食べていいよとのことでここはありがたく中に入れていただいた。一緒に中でうどんを食ってくれたMAXrsv4本当にありがとうございます。
すぐ横の窓の外では残りのメンバーが何やら呑んでいる。窓を開けて手を伸ばすと出るわ出るわウイスキー&熱燗(笑)
温まるからと言われるがままに一口二口と身体に流し込むとこれがハマった(笑)
美味いし、すぐに身体がポカポカしてきてここが休息のポイントだと眠くなっちゃったMAXrsv4と即座にテン場へ。アルコールエイドの皆さんありがとう。シュラフに潜り込みZENを口に放り込んでまもなく眠りに落ちた。
完全にハッピーだ。
DAY3に続く。
by rhythmofmountain
| 2014-07-29 08:45
| mountain